地上に出るのは1日のうち1、2時間だけ。安全が確認できた時に、スーパーへ買い出しに行ったり、自宅に必要なものを取りに行く以外は地下で過ごす。 「防空壕で暮らす私の典型的な1日」 そんな言葉で始まる動画には、ドライヤーの代わりに電動工具のヒートガンで髪を乾かしたり、シェルターに持ち込んだ簡易的な道具で調理をしたり、地上に出て「プーチンが私の街にしたこと」を見て回ったりする様子が映し出されている。 彼女が「プーチンがリノベーションした」と皮肉る病院の動画では、爆撃によって崩れ落ちた病院の跡が克明に記録されている。 しかし、そこに映し出されているのは、あまりにも非日常的な風景ばかりだ。 3月10日、地下シェルターの上層階からBuzzFeed Newsの取材に答えたヴァレリアさんのアカウントは、すでにフォロワーが85万人を超え、いいねの数も計2600万回に達した(3月17日現在)。 約30分の取材の間でも一度、部屋の電気が消え、遠くの方で2、3回爆音らしき音が響いた。それでもヴァレリアさんは笑顔を浮かべて、穏やかに話す。 「どうしてこんな状況なのに、ユーモアを絶やさないの、と驚かれることも多いですが、これが私の世界に対する『語りかけ方』なんです」 「ウクライナではたくさんの人が泣いていますが、私は違う意見を持っています」 「私の動画は、今ウクライナで起きている問題を伝える一番簡単な方法。私が動画で泣かなくても、賢い人であればウクライナがひどい状況にあることは、十分わかっていると思います」 しかし朝、部屋へ起こしに来た母親から「キエフが爆撃された」と聞かされた。友達とのチャットでも「空港が機能していない」「何が起きているかわからない」と混乱した様子のメッセージが交わされた。 外に出てみると、通りは空っぽ。その代わり、スーパーには物資を求めてやってきた人々で長蛇の列ができていた。 「自分の身に起きていることが信じられませんでした。ただただショックで、その時、自分が何を感じていたかは、もはやわかりません」 「たとえば昨日は少し体調が悪くて、熱っぽい感じがするのに、シャワーを浴びたくてもお湯が出なくて…。とにかく全てが最悪でした」 「そうしたら母が『ちょっと外に出て、家まで必要なものを取りにいこう』と言ってくれました。なので、爆撃を受けた病院の様子を見に行きたいと言って、撮影を始めたら、私の中で全てが変わり始めるのを感じました」 「私が今、直面している『戦争』と呼ばれるものに考えが行って、嫌な気分も忘れて、全てを記録することに集中している自分がいました」 「ウクライナでは、人々の生活は止まってしまいました。仕事もできず、何もできず、全てが止まってしまいました」 「爆音を聞くたびに、私は自分の国がおかしくなってしまったと感じます。私はウクライナが恋しいです。今、私はウクライナにいるはずなのに、それでも私の国が恋しくてたまりません」 3月15日に投稿された動画には、彼女が一人、何十時間もかけて電車を乗り継ぎ、隣国のポーランドへ避難する様子が記録されている。 ウクライナ政府が出した総動員令によって、18〜60歳の男性の出国が禁じられる中、ヴァレリアさんの母は父とシェルターに残ることを決めたのだ。 「戦争はおとぎ話ではありません。私の身に起こったことが、いつあなたに起こるかもわからない。だから、ありふれた日常を楽しんで。そして、あなたの大切な人をハグしてください」

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