「今までの7割くらいの力でどうにか働いてくれます」 「数学的に考えて給料を半分にする方が儲かる」 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長のものとされる発言がSNSで拡散された。 しかし、このツイートは柳井氏の実際の発言ではなく、情報としては「誤り」だ。 BuzzFeed Newsが調べたところ、2013年前後にネット上で生まれた「コピペ」で、それが再拡散したようだ。ファーストリテイリングも「事実無根であり、虚偽の内容」と否定している。 内容を信じた人たちからは「労働者を奴隷と思っている。なんてやつだ」「従業員が不憫」「もうユニクロは買いません」など、否定的な反響が多数寄せられていた。 同時に、参照元が明記されていないことで「これは実際の発言なのか?」「ソースは?」と信ぴょう性を疑う人も多かった。
「事実無根であり、虚偽の内容です」ファストリが否定
ツイートから2日後の5月5日、ファーストリテイリングは「SNS上での誤った情報の発信および拡散と、弊社の対応について」として声明を発表。
2013年にTwitter、2014年に2ちゃんで発見
もっともらしく出回っているこの発言は、どこから出てきたのだろうか。 ファーストリテイリング広報によると、柳井氏が個人のSNSアカウントを運用したことは一度もないという。本人がSNS上で過去に発言したが、すでに削除したという可能性は、考えられない。 2013年4月、あるTwitterアカウントが投稿していたのが確認できる中で最も古いもののひとつだった。今回のものとまったく同文だ。 2ちゃんねる上では、確認できる限りで2014年、2015年、2019年、2021年と何度も同じ内容でスレッドが立てられ、複数のまとめサイトで取り上げられていた。 2013年5月のツイートが初出かどうかは不明のままだ。ユーザー間の悪ノリから生まれ、「コピペ」「ネタ」としてインターネット空間で流布していった可能性もある。 “名言集”の最後に記載されているTwitterアカウント「@yanaidtadashi1」は「柳井正 名言」と名乗るアカウントだった(現在は削除済み)。 こちらは悪意あるなりすましというよりは、いわゆるアフィリエイトサイトへの誘導を目的にしたものだと思われる。
実際の発言と並列する巧妙さ
2ちゃんねるスレッドの“名言集”にある他の言葉を調べると、発言元が確認できるものばかりだった。架空の発言と現実の発言を並列で並べているのが巧妙だ。 例えば、「収益を上げられない会社は解散すべき」という言葉は、柳井正氏の著書『一勝九敗』に登場している。 「変革しろ、さもなくば、死だ」は、「CHANGE OR DIE」として、2011年にユニクロのスローガンとして掲げられた言葉だ。 以上のことから、Twitterあるいは2ちゃんねるで、柳井氏の実際の名言を参照しながら「それらしい」架空の発言がつくられ、まとめサイトやSNSで流布していった可能性も考えられる。 ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。 また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。